「海苔再生」へ干潟耕せ
酸素を供給→アサリ復活→赤潮を抑制…
東京新聞 平成13年5月12日(土)朝刊
 不作続く有明海で養殖業者ら
ノリの不作が続く有明海で、ノリ養殖業者らが、 「宝の海」再生に向けて立ち上がっている。 不作の一因ともいわれるプランクトンを食べるアサリに期待して、 まずアサリが育つ環境を取り戻せと佐賀や熊本では干潟を耕し始めた。海中にまで酸素を供給するのが狙いだ。一方、福岡では、すでにアサリをまく試みもスタートしている。不作との関連が指摘されている長椅県・諌早湾干拓事業の排水門開放調査は一年先。 「地味な試みだが、効果はきっと出る「。漁民たちは祈るような表情だ。
大潮の干潮時にトラクター使い
佐賀県川副町沖約七`に広がる漁場では九日、諸富町漁協の組合員が、潮の引いた干潟をトラフクターで耕す珍しい光景が見られた。日ごろは田んほが主戦場のトラクターは、同日までの三日間で約二,五fの干潟で活躍した。
 以前はアサリの生息地だったが、数年前から稚貝を放流しても死滅するようになった。ノリ不作も、プランクトンを食べる二枚貝が激滅し、 赤潮の発生を抑えられなくなったのが一因との指摘もあり、この二枚貝再生も狙った試験的な取り組みだという。
 八十六のノリ養殖業者が加盟する同漁協の小浜勝郎理事は「海を元の姿に戻すためには、諌早湾の水門開放を訴えるだけでなく、自分たちの力でできることから始めようと思った」と話す。 漁協職員の加良秀彰さんは「水門を閉める以前からアサリが死滅する傾向はあったが、水門を閉めたいま、 環境がより悪くなっているのは確実。今回の試みで何とか、アサリが育つ環境を取り戻せれば…」と語る。
 対象となる干潟は約八百f。水深の関係で潮の干満の差が大きい大潮の干潮を中心に月に七、八日しかトラクターを入れられないため、十月半ぼから始まる今シーズンのノリの種付けまでにすべてを耕すのは無理だが、加藤さんは「耕された部分にだけでも、アサリの天敵のクロエイがいなくなる九月にほ稚貝を放流したい。アサリが生きられる環培が戻れば、アサリが汚れた水を浄化してくれる効果がある」と期待し、「効果が表れれぱ今後、行政にも事業の推進を訴えていきたい」 とする。
 熊本県荒尾市沖でも同様の試みが始まっている。荒尾漁協の組合員約三十人は四月中旬から、約一bの柄のついた大きなくま手のような道具で干潟を耕すため、潮の引いた海に繰り出す日々だ。
 同漁協管内でも過去二年間、アサりはまったく採れず、今年も四月から漁期に入ったが、水あげはゼロ。長崎県小長井漁協も、同県に沖合の耕運作業を要望しているという。
 福岡県では、アサリ四百三十dの放流を開始。柳川市沖など五ヵ所で今月四日から六月にかけて推貝二百四十d、九月から十月にかけて成員百九十dを放流。放流地点は来年三月まで禁漁区に指定される。同県有明海漁連は「一刻も早く宝の海を再生したい」と力を込めている。
 こうした試みに熊本県水産研究センターの神戸和生次長は「アサリ不漁の原因が、酸素不足という環境条件だけかという問題は残る」としながらも、「干潟の表面は酸素が多く、酸化されている状態だが、深い部分になると酸素が十分に供給されておらず、真っ黒でメタンガスが発生している状態。耕運することで酸素が供給され、きれいな状態になり、底生生物が呼吸しやすくなる。アサリが増える可能性もある」と言う。
有機物分解促進ある程度は効果
一方、有賀祐勝・東京水産大名世教授(藻類生態学)は 海底耕運はいくつかのところでやったことがある。原則的にはには、酸素を入れて、有機物の分解が促進されるため、ある程度の効果ほある。ただ、基本的には水をきれいにしないと、汚いままで干潟だけ耕しても、すぐに貝台の悪いものがたまる。効果の度合いもこうした要因に左右される」と語り、より抜本的な対策の必要性を指摘した。