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[シリーズ・有明の海]
有明の海・ノリの現場 「転機」
「朝日新聞・福岡」 2001年12月22日

 東京都大田区大森。約60のノリ商社がひしめく全国―の問屋街だ。今月上旬,小売りを兼ねる間屋の店先に「新のり青混ぜ入荷しました」と張り紙があった。「青」とはアオノリのこと。霜降り状に緑の混じった焼き海苔が10枚500円で並んでいた。独特の強い磯(いそ)の香りだ。「舌の肥えたお客さんは,こればっかりょJ社長の言葉には少し誇張があるにしても、人気商品であることは間違いなさそうだ。

産地で行われる入札会ではアオがわずかでも混じれば二束三文で買いたたかれる。アオが着生しやすい福岡県や熊本県の漁民は、酸処理でわざわざ駆除している。客の歓迎する商品が生産されない理由は,流通にある。全国に700社あるノリ問屋のうち、有明地区の共通入札権を持っているのは、指定商社と呼ばれる50社弱。それ以外の問屋は50社からしいれるしかない。

業界に群しい「海苔(のり)ジャーナル」代装の藤井弘冶さん(66)「有明に入札権を持つ大手の問屋がくろくてつやのあるノリ高値で買い、生産者もこれに引きずられてきた。他の問屋や消費者が違う商品を望んでも、正規の流通ルートにはなかなか乗らない」と指摘する。「青混ぜ」を売っていた社長は、個人取引で熊木県のノリ漁師から仕入れたらしい。黒くてつやのあるノリが、必ずしもおいしいわけではない。酸処理技術によって、おいしさとは関係なしに,外見の立派なノリを作れるようになった。

佐賀市西与賀町の島内啓次さん(45)は、秋の1期目と、次の2期目の―番摘みまで,酸をまったく使わない。ノリを日光に当てることで殺菌とうまみをもたらす「干出Jにこだわり、潮の具合に合わせてこまめに網の高さを調節している。「寝不足と重労働の中で,ともすれば心の余裕を失いがちになるが,何とかノリと話をしながらやっていきたくて」

福岡県大和町では,業界初というユ二―クな試みが始まった。東京の大森本場乾(ほし)海苔問屋協同組合(福本恵―理事長)が皿垣開(さらかきびらき)漁協の網16枚を借り上げ.たとえ不作に終わっても120方円を保柾するという契約栽培だ。量で稼ぐこれまでのやり方から離れて、とにかくうまいノリを作ってくれ,というわけだ。8牧の網を託された浦貴光さん(25)は,酸処理した自分の持ち網と違い、11月上旬の赤腐れ病も網を高くつって千出で乗り切った。芽も自分の網より短い段階で摘み、柔らかいノリを目指した。その分,加エしたノリには穴がぽつぼつあいた。外見重視の入札会なら滅点対象だが、この場合は気にせずに済む。

「うまいノリをとる方程式がほしい」というのも組合の注文。浦さんは今後に役立てようと,天気,水温,塩分濃度、風速,風向き,日射量」,気圧、潮位を記録している。大森粗合の中で,有明の入札権を持つ問屋はごく少ない。指定商社だけが入札できる業界特有の制度からすると、異端の動きを始めた形だ。藤井さんは「これまで流通側が海にかかわることはなかった。海の再生に向けて、この拭みが生産と販売の共同に発展してほししいと、期待を込めて語った。(有明海取材班)